炭酸塩岩貯留層モデリング
JAPEXにとって、東南アジアは石油・天然ガスのさらなる探鉱開発を目指す重点地域の一つです。この地域に多く分布する新第三系炭酸塩岩貯留層の性状や分布の正確な評価には、これらの堆積・続成システムの理解が不可欠です。
当社は、2011-2015の5年間、熊本大学との共同研究で、沖縄県南大東島大東層から採取されたボーリングコアおよび地表試料を用いたアナログ研究を実施し、炭酸塩堆積および続成システムに関する知見を得ることができました。
研究概要
東南アジアの炭酸塩岩貯留層の性状や分布は、堆積作用や続成作用によって複雑に支配されています。堆積システムや岩相分布の理解のため、東南アジアの炭酸塩岩貯留層と似た地質学的特性をもつ、沖縄県南大東島を研究の対象としました。
南大東島は、サンゴ礁起源の炭酸塩岩からなる大洋島として知られています。標高30m未満の中央低地と比較的標高の高い環状台地からなる、すり鉢状の地形となっています。南大東島の地表から地下浅部の大部分には、サンゴ礁を起源とする上部中新統~鮮新統大東層が分布しています。
研究前提・手法
- 2013年に熊本大学が島内で掘削した、深さ50mの坑井4本(MD-1〜4)から採取されたボーリングコアを使用
- コア記載および薄片観察、X線回折分析、炭素・酸素同位体比分析、ストロンチウム同位体比分析などの堆積岩岩石学的 ・地球化学的分析を実施し、その結果を総合的に検討
分析検討結果
南大東島における大東層の堆積相
南大東島の大東層は、主に浅海成炭酸塩岩から構成され、以下の5つの岩相(同質または類似するグループ)に区分されることがわかりました。さらに、これらの岩相の組み合わせから、大東層は礁湖相、礁背後相、礁相、礁前縁相の4つの堆積相に細分されることもわかりました。
- 枝サンゴバッフルストーン/フロートストーン(branching coral bafflestone /floatstone)
- 生砕性グレインストーン/パックストーン(bioclastic grainstone/packstone)
- 石灰藻球フロートストーン(rhodolith floatstone)
- サンゴフレームストーン/ラドストーン(coral framestone /rudstone)
- サンゴ藻バインドストーン(coralline algal bindstone)
南大東島における大東層の堆積および続成システム
検討の結果、南大東島の大東層を構成するサンゴ礁の形態は、相対的海水準変動と密接に関連している可能性が示されました。また、貯留岩性状に影響を及ぼすドロマイトの分布や形成時期が明らかになりました。
- 南大東島の大東層は、下位からUnit I、 Unit II、 Unit IIIの3つの堆積ユニットに区分され、また各堆積ユニットでは、卓越風(その地方で特定期間に最も吹く風向きの風)を反映した、非対称な岩相分布が認められた
- 堆積相分布や堆積体の形態から、Unit IとUnit IIIは環礁、Unit IIは卓礁に似たサンゴ礁の形態で発達したと推測できる
- Unit IやUnit IIIのサンゴ礁は、相対的海水準の上昇に関連して上方に成長し、Unit IIのサンゴ礁は相対的海水準の停滞によって側方に成長したと考えられる
- Unit I~IIIの堆積中または堆積後に、複数回のドロマイト化作用が起こった。上部ドロマイトは、中央低地よりも環状台地でドロマイト含有量が高いことから、(卓越風があたる)東側海岸を中心にドロマイト化作用が進行したことが示唆された
南大東島における大東層の堆積ユニットと堆積相分布(出典=*1)
南大東島における大東層の堆積ユニットとドロマイトの分布(出典=*1)
(出典)
*1: 島津崇・八木正彦・淺原良浩・嶋田純・松田博貴, 2015, 南大東島のサンゴ礁発達史, 月刊 地球, 37, 12, 514-520
研究成果
この研究で、南大東島の大東層に関する以下の3点が明らかとなりました。
- サンゴ礁を起源とする上部中新統~鮮新統炭酸塩岩は、相対的海水準変動を反映して、サンゴ礁の形態を変化させながら発達した
- 堆積相とドロマイト化作用は、サンゴ礁の形態や卓越風を反映して複雑に分布している
- 炭酸塩堆積システムを考察するうえで、堆積当時の海水準変動や海洋環境の復元が重要と考えられる
これらの知見は、当社が参画するインドネシア・カンゲアンプロジェクトをはじめ、この地域に似た地質セッティングで形成された、東南アジアの炭酸塩岩貯留層の探鉱開発の検討などへ適応していきます。
(補足情報)
・本研究成果は、熊本大学 松田博貴教授との共同研究の成果の一部です
・ボーリングコアからの試料採取では、科学技術振興調整費「戦略的創造研究推進事業(CREST);持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」:「地域水循環を踏まえた地下水持続利用システムの構築」(代表研究者:嶋田 純)の一部を使用しました
・堆積相名には、Duham(1962)およびEmbry and Klovan(1971)の分類を適応して命名しました
当社ウェブサイトは、訪問者様のサイト閲覧時の利便性向上のために、Cookieを使用しています。当社ウェブサイトのCookie使用方針をご確認いただき、ご同意いただける場合は「同意する」ボタンを押してください。当社ウェブサイト閲覧時のCookieの使用に同意いただけない場合は、ご利用のブラウザでCookieの設定を無効化ください。