EOR(原油増進回収)
EOR(Enhanced Oil Recovery:原油増進回収)は、原油の回収率をあげるための技術です。通常の生産方法では回収率が低い地層や、生産開始からの年月経過などにより生産効率が下がった生産井などに適用しています。
JAPEXでは、さまざまなEORの技術開発に取り組んでいます。
EOR(Enhanced Oil Recovery)とは
原油は、存在を確認した地層(貯留層)に向けて掘削した井戸から、貯留層が持つエネルギー(圧力)で自噴し生産されます。しかしながら、貯留層が持つエネルギーだけで回収できる原油は、地下にある原油の量の3割にも満たないと言われています。そのため、原油の回収率を高める技術は新たな油田の発見に匹敵する重要性を持っており、さまざまな技術の適用や研究が進められています。
一般的に、原油の生産は以下の3つのフェーズに分類されます。
- 一次回収:貯留層が持つエネルギーで自噴し生産を行う
- 二次回収:油層に水やガスなどを圧入し原油を押し出す、坑内にポンプを設置し機械的に汲み上げる
- 三次回収:岩石や地層流体の物理・化学的特性を変化させ、地下に残る原油を回収する
一次回収時点の回収率は、一般的に地下にある原油の量全体の30%にも達しないといわれています。二次回収により回収率は40%程度に上昇するものの、それでも地下には60~70%の原油が残されています。さらに回収率を上げるための「三次回収」の技術はEOR(Enhanced Oil Recovery)と呼ばれています。岩石や地層流体の物理・化学的特性を変化させ、これらの地下に残存する石油を回収するための技術開発が、多くの研究機関や石油開発企業で行われています。
一般的な油ガス田の生産フェーズと生産量推移
JAPEXの取り組み
JAPEXは、国内外の一部の原油などの生産操業現場におけるさまざまなEORの適用実績があります。
- 国内油田の一部:ガス攻法・WAG(Water Alternating Gas)攻法
- カナダにおけるオイルサンド開発:スチーム攻法の一つであるSAGD(Steam-assisted gravity drainage)法
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またJAPEXは、EORの検討で重要な要素となる多くの技術を持っています。
- EOR検討段階で重要となる岩石・ガス・油の各種分析
- 模擬地下条件での流動状況や回収率を把握するための試験(コアフラッド試験)
- 効果的なEOR手法を検討するための貯留層シミュレーション
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岩船沖油ガス田へのガス攻法適用
新潟県・岩船沖油ガス田(*)は、2006年1月に国内の海上油田で初めて、EORの一種であるガス攻法を商業生産で適用しました。
当社子会社の日本海洋石油資源開発株式会社(JPO)は、岩船沖油ガス田(*)に対して、2006年1月にEORの一種であるガス攻法を、国内の海上油田で初めて商業規模で適用しました。
2002年に原油生産量の減退対策としてEORの適用検討を開始し、油層の構造頂部へのガス圧入(ガス攻法)が有効という結論を踏まえ、2004年12月に主力の油層(2,100m層)へのパイロットテストを実施しました。パイロットテストの良好な結果を踏まえて、2006年1月に商業規模でのガス攻法を開始しました。2017年12月までの実施により、当該油層の原油回収率が向上し、当初の採算終了見込み想定から10年以上生産期間を延長できています。
また、原油回収量のさらなる増加を目指し、2018年1月からは同層へガス/水の交互圧入(WAG:Water Alternate Gas Injection攻法)を適用しています。
岩船沖油ガス田2,100m層へのガス攻法による原油増産効果
注)
* 岩船沖油ガス田の開発・生産操業は、石油資源開発株式会社(株)、日本海洋石油資源開発株式会社(株)、三菱ガス化学株式会社(株)の共同事業。
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